店で使う小麦の一部は自身の畑で育てたもの。父が開発を手懸けた“この土地に合う品種の小麦”を引き継いで作っている。畑は店から車で15分ほど行ったところにあり、現在は小麦とライ麦の両方を栽培。5反という広さの畑の田植えも全て自分たちの手作業で行っている。
育った麦の製粉の一部は店の隣にある水車小屋の製粉機で行う。脇を流れる小川の水力を利用しての製粉が父の理想だったが、水力不足などの理由で電気を使っている。知胤さんは何とか水車を利用しての製粉を実現しようと手を尽くしたが、実用化は出来なかった。しかし、この水車は父が最後に残した作品として“店のシンボル”としての役割をしっかりと果たしている。
窯は薪と電気の両方をパンの種類によって使い分けているのが現状だ。薪窯用の薪は空いた時間を利用して猪原さんが割っている。薪割りは週に1〜2回の作業だが割り始めると作業は3〜4時間に及ぶ。たいがいパン作りを終えてからの午後の時間がその時間に充てられているそうだ。
薪割り作業をしていると体は徐々に熱くなり、真冬でもTシャツ1枚という姿になることも。(大泉の冬は寒いのに!)腕にはその細身の体からは想像も出来ないほど大きな“力こぶ”。取材中感動して(?)思わず写真をパチリ。まさに『脱いだらすごいんです!』という感じ。
定休日は週に2日。しかし最初の1日は薪割りやその他の用事を片付け、残りの1日は仕込みがある為休日らしい休日を過ごせていないのが実情だ。
『そんな休みが無くて大丈夫ですか?』という私の問いに
『今まで遊んできたんだから休みが無くても仕方ないです。』
と穏やかに微笑んだ。
経営者としての悩みや肉体的な疲労などはもちろんあるかと思うが、それよりも『パン作りに夢中』という印象を受ける。
そのエネルギーはどこから生まれてくるのか...?それには父の存在が大きく影響しているようだ。
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