毎月、共通教育センターのメンバーに語ってもらうという趣旨のコーナーです。

もくじ

第1回 竹内はるか先生

第1回 竹内はるか先生

山梨学院大学に着任されるまでを教えて下さい。

 自分の専門分野である方言の研究は、大学4年生で行った「音声アクセントの研究」から繋がっています。私の出身である三重県は、東西日本方言の境界地帯に位置しています。この境界地域において、東西の方言アクセントが互いへどう影響しているか、どんな変化を生んでいるかを調べる研究でした。その後は、東京の大学院で、首都圏で広がっていることばを調べたり、東京方言についての言語地図を作成したりするなど、東京近郊のことばについても興味を持ちました。ライティング教育そのものへの関わりは、博士課程に在籍していたときに、本学の「言語技術」のような科目のティーチングアシスタント(TA)をしたことが最初になります。その後、非常勤講師として科目を担当するようになりました。
 最初のTAへのお誘いは、研究とは全く関係が無くて、顔の広い私の指導教員が持って来た話でした。平家物語や源氏物語を研究している先生方と一緒に仕事をしたのですが、全然違う世界を感じました。実は近藤センター長は当時そこに在籍されていたのですが、唯一TAに入らなかったのが近藤先生のクラスでした。最終的には、その近藤先生から誘われて山梨学院大学に来たのですから、縁って不思議ですよね。

山梨学院大学での担当科目や業務を教えて下さい。

 担当科目は「言語技術」のみです。科目外の業務としては「ライティングサポートデスク」の運営を主に担当しています。
 「言語技術」は、前期・後期を通して、「相手にわかりやすく伝える」ということを学生に意識させて、その「『わかりやすく伝える』が達成できる文章」はどうすれば書けるかを考えましょうという科目です。前期は、興味のあることについて資料を探し、そこに書かれていることを踏まえて、考察したことをレポートとして伝えることを学びます。後期は、自分自身の体験や視覚情報など、自分自身の中に持っている事柄を、形にして「わかりやすく伝える」ということを学びます。「わかりやすく」ということは「受取手に負担がない」ことで、これが1年間を通じてのコンセプトになっています。前期は、既に存在している事実を調べて伝える、後期は、どこにもない自分の中にある事柄を伝えるという学びになります。法学部と経営学部の1年生対象の科目で、常勤4人+非常勤2人という言語チームで、20クラスを運営している科目になります。全クラス、教える先生の個性はあるにせよ、同じ内容を同じ評価基準で実施しています。
 もう1つの、私が主担当で運営している「ライティングサポートデスク」は、名前の通り「『文章を書く』や『思考の整理をする』ことのお手伝いなどを目的として、授業と関係なく、先ほどお話しした言語チームが常駐して対応するサポート窓口です。「添削をしない」というのがポイントで、赤を入れるのではなく、思考の整理のお手伝いをしていきます。当然、文法的な指摘はするのですが、自律した書き手になれるよう、自分で考えてもらって、それだとうまく行くかな?を一緒に考えていく感じです。相談に来てくれた学生本人が納得することも重要なので、それは念頭に置いて対応しています。「どう書けばいいか」という最適解を求める学生が多そうに感じるかもしれませんが、最近そういう学生をほとんど見なくなりました。添削の場ではないということが浸透してきてくれているのかも知れません。

こういう教員になりたいというイメージを教えて下さい。

 私自身が、これから先も積極的にいろいろなチャレンジをしていきたいと思っています。その中で経験したことを学生に生き生き語れる先生になりたいし、そういう先生でいたいなと思います。生き生き語るためにいろいろな経験をしたいし、その中でいろいろなものをできる限りフラットに見つめて、それを伝えられる先生でいたいって感じでしょうか。
 あとは、方言の授業を持ってみたい!SA(スチューデントアシスタント)の学生さんを捕まえてたまに話をしていますが、授業で講義してみたいです。山梨にいるので、山梨でのフィールドワーク調査も行きたいですね。早川町の奈良田などは特殊なアクセントで有名な地域ですし、東京に近いので注目されにくいのですが甲府も「東京と似ている」だけでは語れないことがたくさんあります。ぜひ、地元のことばに興味のある学生が頑張ってくれるといいなと思っています。

休日などのオフでの過ごし方を教えて下さい。

 休みの日、長期休みがあれば、私は方言研究者でもあるので、フィールドワークを行います。事前に話者を探して、何日かの通いで調査につきあってもらって、そのアクセントを国際音声記号で記録するということをしています。動詞や形容詞、終助詞などはバリエーションが豊富なので、同じ人に何日も何日も聞いて記録します。先ほどお話ししたように、東西方言の境界地域を研究しているので、今だと太平洋側の愛知や三重周辺を調査しています。日本海側である富山や新潟、内陸の岐阜も調査したいですね。
 研究じゃない過ごし方だと、収集癖の一種だと思うのですが、スタンプラリーとか御朱印集めをしています。後者は学会に行く時など、ついでに行ける範囲の神社を巡ったりしています。コロナ禍でしばらくできなかったのですが、最近また再開しました。更に最近だと、お城巡りで100名城、続100名城のスタンプを集めることも始めてしまいました。たくさん集めると認定証が貰えるんです。山梨県から始めて、近隣から全国まで、制覇していきたいなと思っています。こういった経験の蓄積も、さっきほど言った理想の教員像に繋がっている気がします。

最後にご自身の「座右の銘」みたいなものを教えて下さい。

「『楽しい』を見つけよう!」です。

竹内はるか先生、ありがとうございました。(聞き手・執筆:原)