2第99回大会本戦での山梨学院大は、1区木山達哉の区間8位で好発進した 3年連続36回目の本戦出場を果たした山梨学院大は総合14位でフィニッシュ。1区の木山達哉(4年)が前年の自身(区間14位)を上回る8位につけ、2区のボニフェス・ムルア(4年)が4位に引き上げ、ハイレベルな上位争いの一角に食い込んだ。 その後、3区と9区の苦戦や5区新本駿が途中でケイレンに見舞われるピンチがあったものの、続く4区北村惇生(3年)や10区篠原楓(4年)がたくましく走り抜いて流れを戻した。6~8区もハイレベルな区間タイムで走破し、10位以内が得るシード権にじわりと迫る場面も。総合記録の11時間04分02秒はチーム新記録となった。そこへ至る苦難と成長の足跡─。ーニングに様々な工夫を進取の精神のもとに取り入れてきた。走練習に加えて行う体幹や脚筋力作りのメニューが雑草選手たちの礎を作る。 そんな駅伝シーズンに直結する重要なキャンプが、2022年の夏も充実したムードで開始。木山達哉を中心とした4年生が積極的に引っ張り、合宿後半へ向けた下地作りを行った。 しかし、ここで予定が大幅に狂うことに。メンバーに新型コロナ感染症の陽性が判明したのだ。 当時全国的に猛威を振るっていた新型コロナに対して、素早く適切な対処がなされた。その1つが10日間の活動完全停止。まずは感染の収束と選手の健康が第一だ。 その影響で、トレーニングの進行はやむを得ず振り出しに戻った。活動停止期間を終え、合宿の残りの日程は消化したものの、ジョグ中心の練習で慣らす段階からやり直し。 強いトレーニングを満足に消化できず合宿期を終えると、もう10月の予選会は目前に迫っている。異例の調整過程、準備不足を抱えた状態で、予選会のスタートラインに立った。「予選会でのもともとの目標は3位通過でした」と主将の伊東大暉が明かす。「本戦でも上位戦力の他校がいるなかでの3位は、“シード権獲得が明確に見える指標”でした。そこへ予期せぬコロナ。本戦出場権も取れるかどうか、危うい状況でした」。 前半の10kmは作戦通りに進行し、総合4位で通過。しかしレース後半に準備不足の影響が表れた。15kmまでに隊列が崩れてしまう。苦しくなった。 そこから選手たちが持ちこたえた。1年のジェームス・ムトゥクが個人4位、北村惇生(3年)が個人18位。充実の2人が稼いだタイムに、エース格の木山も終盤の失速を最小限に抑え、その後方では髙田尚暉(2年)、小野寺陣(4年)が踏ん張りを利かせていた。 予選会総合7位。「このチーム状態で本戦出場権を取れたということは、あと2、3か月で良くなるのみ。プラスの考えに変換していくことができました」と伊東主将が振り返る。プラスに変換 本戦への準備期間。ピンチを乗り越えたチームが、夏場にできなかった強化に乗り出していた。大崎悟史コーチが、ピンチを逆手に取る選手たちのムードを感じ取っている。7位通過の裏事情 10月15日、立川での箱根駅伝予選会。山梨学院大は3年連続の本戦出場を決めた。この予選会成績が、前年の4位通過に劣る総合7位とあって、本戦前の注目度は高くなかったのかもしれない。しかし、予選会前の「ある事情」を知れば、予選会は「選手たちの精神力に助けられた」(飯島理彰監督)戦いだったのである。 予選会へ向けてもっとも重要な鍛錬期を過ごす8~9月の夏合宿─。長野県・車山を拠点に3回にわたって行い、霧ヶ峰のクロカンコースや、白樺湖周回のロードコースなどで脚作り、スタミナ作りに勤しむ。 チームの草創期から30年以上も車山に足を運びつつ、アカデミックな観点からトレ 第99回箱根駅伝ドキュメント雑草たちのネクストステップ雑草たちのネクストステップ
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